(対談: 佐藤潤一×影山知明)第1回 環境問題を変えるには、経済のしくみを変えないと

国分寺のカフェスローで

東京・国分寺のカフェスローで

 

今回は、いつもと趣向を変えて、対談記事をお届けします。

国際環境NGOグリーンピース・ジャパン前事務局長(2016年4月末退職)の佐藤潤一さんと、「シェアする暮らしのポータルサイト(シェアくら)」代表の影山知明の出会いが実現しました。

佐藤さんは長らく環境保護活動に携わってきて、今思うのは、「経済のしくみを変えることが大切。Takeじゃなく、Giveの経済だ!」と。実は、これはいつも影山が提案していることでもあるのです。全く面識もなくお互いの存在さえも知らなかった異色の二人。しかし、ものすごい化学反応が起こっていました!多くの人がそのリーダーシップとカリスマ性を認める、このお二人が紡いだ名言の数々を、これから全3回にわたり、ぜひお楽しみください。

(対談日:2016年4月12日)

 

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佐藤潤一

1977年生まれ。米国コロラド州フォート・ルイス大学卒業。在学中及び卒業後、貧困・環境問題の活動や研究に取り組む。帰国後2001年に国際環境NGOグリーンピース・ジャパンのスタッフに。2010年12月にグリーンピース世界最年少事務局長に就任。2016年4月末でグリーンピース・ジャパンを退職。

 

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影山知明

1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社に入社。ベンチャーキャピタルの経営を経て、2008年10月にクルミドコーヒーを開業。2015年4月から1年間、NHK NEWSWEBの第4期ネットナビゲーターとして出演。著書に「ゆっくりいそげ〜カフェからはじめる人を手段化しない経済〜」(大和書房)。

 

 

 

地球環境を壊しているのは誰?

 

影山:佐藤さんのプロフィール見させてもらったんですけど、経済っていうキーワードが全く出てこないっていう(笑)。メキシコにいらっしゃったり、調査捕鯨の件で逮捕されたり、劇的な人生ですね。

 

佐藤:もともとはジャーナリストになりたかったんです。現場に行くのが一番だろうなと常に思って動いていたら、いろいろ出くわして来ました。グリーンピースでは14年間やってきて、一回ここで一切ストップして、しばらくぼーっとしてみようかと。その間、いろんな人に出会える機会があればいいなと。今日は光栄です。いろいろお聞きしたいです。

 

影山:こちらこそ。佐藤さんから経済っていう単語が出てきたのは意外だったんですけど。

 

佐藤:誰が環境破壊しているかって考えた時に、生産と消費の両方がキーなんです。グリーンピースで最初に取り組んだのは、ごみ問題でした。ごみって社会を表すキーワードで、そもそもごみを出さないことが大切なんです。今の日本では最終的にごみにならないものをつくるインセンティブが少なくて、つくったら終わり。これは、なんとかしないといけなくて。企業がものをつくる過程をどう変えるかに興味があったんです。つくり方を変えるために、調達方針を整えたり、環境破壊に加担しているものを使わないようにしてもらおうと。また、それを消費するところのラインも含めてどう変えていこうかと。

でも、環境保護活動は、気候変動問題、森林問題、海洋問題などなど、起こってしまったもの、つまり症状(シンプトン)をどうにかしようっていうもので。ひたすら逆流を登る魚のような感じで、どうしても追いつけない苦しさがあるんです。環境問題を根本的に変えるためには、そもそもの経済の仕組みを変えない限り難しいだろうな、と思っています。

 

 

グリーンピースの役割って?

 

'Tokyo Two' Trial Appeal Hearing

 

影山:実際に、グリーンピースが、メーカーなどに働きかけて変わっていった部分もあるんですよね?

 

佐藤:パナソニックさんはすごくいい事例です。90年代、当時からオゾン層破壊はすごく言われていて、フロンガスを使わないようにしようと。でも代替フロンが、気候変動にはすごく悪影響なのにいいイメージで売られていた時期があるんです。そこで、フロンも代替フロンも使わない冷蔵庫を作ってください、とパナソニックさんにお願いしました。もうわざわざ言われもしませんけど、今ほとんど100%家庭用の冷蔵庫は、どっちも使わないノンフロン冷蔵庫なんです。

ユニクロさんには、有害化学物質を含まない服をつくってくれるようにお願いして、2020年までに全廃させるために一緒に取り組んでいたり、また、花王さんにもパーム油という森林伐採に加担している植物油を使わないで製品をつくってくださいとお願いして、一緒に取り組んでいました。

でも、一つ一つの部品や素材を変えることには、成功するんですけども、どうしても大きな枠組み、果たしてこんなにつくっていていいんだろうか?こんなに使い捨てでいいのか?というところまでは到達しないんですよね。

 

Junichi Sato

 

影山:佐藤さんは、それだけ実績を積み重ねてきて、グリーンピースという組織だからこそできたことがあったと思うんですけど。これからは、また違ったアプローチでやっていかれるお気持ちなんですね?

 

佐藤:グリーンピースの役割は非常に明確で、何かを止めていくことだと思うんですよ。それは非常に得意。問題を指摘して、変えてくださいと。でも気候変動のような曖昧な問題で、誰もが加害者ですよという時に、あなたの企業さんの問題ですよと言っても、対応が遅い。本当は環境にいいことを企業さんに自発的にやってもらわないといけないんですけど、でもこれまでの経験ではそれはすごく難しくて、よっぽど良い企業ではないと長続きしないんです。それが利益に繋がっているのか、他の企業との競争に勝てるのか、それを使い続ける意味はなんなんだろうか、と企業は自問自答する。逆流にさらされているんです。

 

影山:そこを根っこから変えようと思うと、難しい。

 

佐藤:でも、中小の企業さんたちはいっぱいいいことやっている、というのがキーですね。グローバル企業は社会的ミッションを掲げた中小企業のやり方をどれだけ採用できるのかが課題だと思います。大きな企業が環境破壊するスピードと、環境にいいことをやるスピードを比べると、破壊のスピードのほうがはるかに速いので、そこをどうやってひっくり返すかですね。

 

 

世界のお金の流れは変わりつつある

 

Raising a Wind Turbine in Durban

 

影山:自分も今はカフェをやっていますが、その前は金融の仕事をしていたので、資本市場、株主が企業に対して持っている影響力を想像できます。不思議なんですけど、環境破壊、ごみの問題なんかでも、働いている個人個人の話を聞くと、悪いことをやりたいって人は一人もいない(笑)。経営者でさえ個人として選べるんだったら環境破壊しない方がいいとは言うわけです。

でも、資本主義という大きなメカニズムの中で、今週よりも来週、今期よりも来期の売り上げを伸ばして、利益を大きくしていかなければいけないっていう力学の元にさらされていると、個人の意思とはまた別の選択を組織としていかなければいけなくて。自分も投資ファンドという形でそれに加担していた面もあって、その反動で今やっているようなことをやっているんですけど。

逆に資本主義のメカニズムを前向きに変えられれば、企業行動を変えられる面はあると思うんですよね。お金の流れも。社会的責任投資ということで、それにアプローチしてきた人たちもいましたが、そこはなかなか実効的でないんでしょうか?

 

佐藤:日本では特にそうですね。でも、例えばノルウェーの政府年金基金は、石炭火力には投資しませんよと言ってます。とすると、非常に大きいお金が動くんです。海外では少しずつ気候変動には厳しい投資条件をつけてお金を回すってようにしてるんですよね。確か、30%以上が石炭火力由来のビジネスになっている企業には投融資はしませんよというルールができてるんです。大きな機関投資家がやってくれると、それは日本企業にもちょっとずつ影響はあると思います。

お金の流れを変えることが一番重要なので、国際環境NGOとしても、金融を変えることは一つ大きな命題です。最近、ダイベストメントといって、投資を引き揚げてもらう活動は結構やっていますね。

 

影山:それは誰に向けてですか?

 

佐藤:機関投資家に向けてですね。アメリカでは大学でもやっていて、大学が集めた授業料や寄付に関して投資先を火力発電に投資しているところから抜くとか、結構な額が引き揚げられているんです。そういう意味では、パリ協定後、国際的にはそれがすごく加速してるんですね。世界銀行も石炭火力に関しては、規則を設ける動きになっています。

その中で、日本だけは逆行していて。世界最大のファンド(GPIF: 年金積立金管理運用独立行政法人)を持っているにもかかわらず、全くそこにはルールがありません。日本は、石炭火力や気候変動には逆にかなり前向きにお金を出していて、特に、東南アジアでは、石炭火力のインフラ設備にも融資してしまってますね。そこはまだまだ規制が緩いですね。

 

Airship over the East Bay

 

その一方で、Appleとか、Facebookとか、Googleとか、逆に自然エネルギーを使ってもらうおうというキャンペーンをグリーンピースが仕掛けて、実際に会社がコミットしてくれた事例もあります。

Appleは100%自然エネルギーで回すってことに全体で取り組んでいますね。世界中の自社データセンターを全て自然エネルギーで賄っている。製造も変えようとしていて、自社工場でないにもかかわらず、製品をつくる場合は、自然エネルギーで作ってくれと調達先に働きかけています。大企業がサプライチェーン全体を変えるというのは、大きな流れで良いと思います。

 

 

日本が考えるべき、エネルギーのこと

 

Protest outside KEPCO AGM in Osaka

 

影山::エネルギーの独特の難しさってありますね。悪いことをやってるところを非難していく、攻撃していくアプローチはそれでありつつ、いいことをやっている企業を褒める、背中を押すやり方っていいなと思います。日本にはそっちのカルチャーはあるように思うんですよね。ですけど、日本のエネルギーの問題はなかなか進展しないのはなんでなんでですかね?

 

佐藤:しがらみってすごく大きい気がしますね。どうしてもエネルギー産業の企業さんたちは、昔からの関係性があって。電力会社、発電所をつくる会社、そこに投資する銀行。昔からでき上がっている経済のシステム、大きな流れがあって。そこを変えるのはどうしても難しいんですよね。特に今の政権は、それらの石炭火力、原発の技術をすでに持っている企業さんを優遇する方向で。

日本の企業は、昔は自然エネルギーの技術を持っていたのに、今は海外の企業に圧倒的に抜かれてしまって。そっちでは、もう追いつけないので、むしろ海外の企業がやめてしまった石炭火力、原発産業の方が日本にとっては競争優位で、東南アジアとかこれからインフラ整備する国は良いお客さんなんです。

 

影山:この4月から、せっかく家庭用の電力が自由化されて、選択肢が増えているように見えるけど、エネルギーのソースについてはほとんど選択肢がないですよね。インターネットとセットだと安いとか(笑)

 

佐藤:電線を大きな電力会社が持っているなど根本的な問題がまだまだあるので難しい。成功しているスペインなんかは電線を他の会社が持ってるんですよね。日本では、小さな電力会社は、なかなか競争としては優位に立てない法制度になっている。電線も顧客も大きな電力会社が持っているところからのスタートで、そこではフェアにやっていくのはなかなか厳しいですね。とはいえ今回電力自由化を始められたのは大きいですね。

 

第2回に続く)

城野 千里

城野 千里

コレクティブハウス居住によるシェアする暮らし経験5年。 現在は、東京杉並区に在住し、持ちよるまち暮らしについて体験&考察中。 関心事は、社会、環境、文化、アート、料理、食べることなどなど。

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