(対談:佐藤潤一×影山知明)第3回 贈ることから始める、新しい経済のつくりかた

kageyama kurumi

 

(第2回からの続き)

 

クルミドコーヒーでのチャレンジ

 

佐藤:やっぱり、「感謝」がない限り、全ては行き詰まりますね。感謝をベースに考える経済では、顔が見えないといけなくて、範囲が設定されてしまう。それをもっと大きな範囲でできないのかなあと思うんですけど。

 

Junichi Sato

 

影山:こういう理屈が、個人対個人の関係だとイメージできるし、成り立ちやすいと思うんですよね。ただ組織という大きなメカニズムの中では、人はTakerとして振る舞うっていう不思議がある。内外の関係者を、組織の目的のためにいかに利用していくかという構図の中でGiverとTakerとが向き合ったとき、少なくとも短期的にはGiverが傷つけられ、奪われる側になっちゃうっていう現実感あると思うんですよね。だからみんながTakerになっていく。

個人の理屈が組織の理屈にひっくり返っちゃうところを、どうしたら変えられるか。そういう意味で、最初は、お互いに感謝できて、お互いに寛容であれるといいね、というのを個人の言語として思っていたんですけど。それが、組織にも適用しうるんじゃないかというのが、僕なりのチャレンジで。

 

05 チーム

 

僕らのチームは20人っていう規模感だけど、お互いがGiverである、目の前の人を支援するっていう関わりで組織体をつくっていったらどういう組織になるかなと思ってやってきたら、それがなんか今、面白いことになってきているんです。7年半経って。これはありなのかもと、ようやく思えるようになってきました。クルミドコーヒーという組織が、個人の理屈と矛盾なく、整合性を取った形で振る舞えるという状況が起こってきて。

そして今度、同じまちの中に、例えばカフェスローさんがあって、こことそこの関わりかたも齟齬が起こらないようにしていくにはどうすればいいかな、というように考え始めて。少しずつ半径が広がっていっているんですよね。手応えがあるとすると、そういうことかなと思います。

 

佐藤:そういう風に手ごたえを感じられると面白いですよね。

 

 

地域通貨が、力学の転換を起こす

 

06 ぶんじ

 

影山:「ぶんじ」っていう地域通貨をやっています。100ぶんじが100円相当。使うときに一つだけルールがあって、裏面に一言メッセージを書いて渡すんです。僕なりの捉え方なんですけど、お金の定義を変えたいなと思ってて。お金は何かを手に入れるための道具、として認識されているけど、Takeのための道具ではなくて、人の仕事を受け止めるための道具に変えられないかと。

例えば今日なら、美味しいごはんが食べられた、いい時間が過ごせたっていう、カフェスローがGiveしてくれたものに、ありがとうといって、ぶんじを渡すんです。

この界隈で、200人くらいが使ってくれているんですけど、やり始めて多くの人が気づくのは、実は自分の日々の暮らしがいろんな人の仕事によって成り立っているってことです。ぶんじによって、その感謝の気持ちを言語化するんです。

感謝してくれる人がいると今度は贈る側も嬉しくなって、もっといいもの作ってやろう、どうやったら目の前の人をもっと喜ばせられるんだろう?って考え始める。そうやって、贈る気持ちがどんどん高まっていって、結果的に受け手が送り手を育てて、まちの辻々に贈る仕事が溢れていく。そういうのが、いいまちだなと思います。その力学の転換を起こすものがこういう通貨のあり方かなと思っています。

 

佐藤:すごくいいですね。お金は何でできているかというと、本当は感謝の気持ちでできているはずなのに、感謝されないお金が問題で。自分が何のために働きたいかっていうと、感謝されるのがすごく大きなインセンティブなんですよね。だからこういう風に具体的にできるといいですね。例えば、こういう地域通過が、地域を超えることは可能だと思います?

 

影山:僕は、「国分寺」じゃなく、あえて住所表記にない曖昧な「西国分寺」っていう単位で考えたいと思ってるんです。関わる人が自己決定で関わるかどうかを選べることが大切で、範囲が伸び縮みする。そうすると結果的に市町村の枠組みを超えて他と繋がりやすいんです。ただ最終的には、日常的に、身体的に関われることがもたらす力は大きいので、自然にその半径はできていきますけどね。

 

 

人を生かす。木が枝を伸ばし、葉をつけていくように。

 

kurumiwari ningyo

 

影山:うちのスタッフが回りの人に一番何を求めるかというと、反応を示してもらうことなんです。別に褒めてくれなくてもよくて。ただその仕事が誰にも認識されていない、つまり、自分の仕事の受け手がいないと思うと、空虚な気持ちになる。何のために自分は頑張っているんだろうと。だから、反応を示してあげたり、感謝したり、労ってあげるってことが大切だなって思います。それを10通のメールで伝えるよりも、直接会った中で言ってもらえる方がよほど満たされるっていう。だから、やっぱり、身体的な要素、顔の見える範囲、は無視できないですね。

 

佐藤:クルミドコーヒーでは、採用ってどういう風にされていますか?

 

影山:さっきのブリコラージュの話じゃないんですけど、こういうことを実現したいから、こういう技能を持っている人を採用しようっていう考え方はあまりしないです。あくまでその人が働きたい、って気持ち持ってくれていることがスタート。そして入った人を見て仕事をつくっていく。この人だったら、きっとこういうことに向いてる、こういうことだったら力を発揮してくれるんじゃないかと。

そうやって新しい人が入ってくるたびに、仕事の範囲が広がっていく。木が枝を伸ばしたり、葉をつけたりしていくように、人の顔ぶれの違いがお店の様子にさえ影響を与えていると思います。

 

佐藤:これまでの組織論とは真逆なんですね。

 

影山:仕事に人をつけるんじゃなくて、人に仕事をつけていく。その人がいなくなっちゃうと、お店の大事な部分も同時に失われるってことが起こるんですけど、それはそれでいいんじゃないかって。

 

佐藤:小さな組織だと、やっぱりどうしても人手が足りなくなっちゃって、一人がいろんなことをやらなきゃいけなくなってくるんですけど。結局はいる人たちの一番得意なことをやってもらうのが、一番うまくいくんでしょうね。

 

kurumed music

 

影山:やらなきゃいけないことは極力なくしていくっていうか。いつまでにこれを成し遂げなきゃいけないってことは、冷静に考えていくと実はあんまりないんじゃないかと思います。逆に、それぞれなりに、やってみたいっていうことがあったとき、そこにうまく水をやれるといいですね。自分で決めたことや実現したいって思ったことには、本当に頑張るし、力を発揮できる。

そういうことをやりながら、僕自身が教えられています。ただどれくらいの規模までだったらこれが成り立つかっていうのは、次のチャレンジですね。20人だからできているけど、200人ではどうかとか。

 

佐藤:もし既存のシステムで動いている企業から、そいういった組織のつくり方について、アドバイスを求められたらどう伝えますか?

 

影山:僕は、そこを成り立たせている根本のメカニズムからは自由になれない、と思っています。大きな上場企業の経営の仕組みでこれを適用しようとすると、体のいい新しい管理手法になっちゃう。経営陣として社員の生産性をより引き上げるための。MBO (目標管理手法)のような、お前がやるって言ったんだからやれ、みたいな。そこの大きな構造が変わっていないのに。現場的な運用レベルでは限界がある、と思います。

 

 

「変える」より新しいものを「つくる」。その先にあるもの。

 

佐藤:そういう社会の仕組みで動いている企業が、99.9%なんですよね。そういう企業さんの中で、今後の動きってどうなると思います?だんだんそういう方向に動いていくって思われますか?

 

影山:幾つかの段階があると思うんですけど。僕は、グローバル経済、資本主義の正の側面もいっぱいあって、その利便性を自分が享受している自覚もありますしね。そこにやりがいを持って取り組んでいる人がいることも知っているから。僕はこれを否定するつもりはないし、これはこれであり続けるし、求められると思うんです。グリーンピースのような存在が、そこにどういうチューニングを施していくかってことはありますけど。

ただ僕はもう、そこを変えるよりも、別のものをつくっちゃおうと。ある時から、「変える」ってことば使うのをやめまして。佐藤さんは、カエルのサイトをやられてましたけど(笑) 僕もChangeってことばを一時期好んで使っていたんですけど、変えてたら間に合わないっていうか。変えるより、新いものをつくった方が生産的だったり、結果的に目的地に早く着くかもしれないと思って。新しい経済や社会をつくっちゃう。それに、いいね!と言ってくれる人が増えたら、ちょっとずつこういう事例が広がっていくんじゃないかと。

 

08 つくる

クルミドコーヒーは、壁も床も日々の営業も一つひとつ人の手によってつくられている

 

そしたら、そのうち、この二つの経済が実は全く逆のベクトルを向いていることが、よりみんなにわかる時期がくるだろうと思うんです。Giveから始める経済、人を生かすことから始める経済もあるんだと思われる時期。そういう対比で見られる時期が来るだろうと。そして、最終的には、合気道。

これは妄想レベルだし、僕が生きている間には実現しないかもしれないけど。こっちの新しい経済システムのモデルが一定の閾値に達した時に、もうごっそりとひっくり返るように、物事のリソースが入れ変わるってことがあるかもしれないなと思います。合気道、つまり、小さいものが大きなものを投げ飛ばす。直線的に割合が高まって変わっていくのではなく、あるところでぐっと変わるんです。

 

佐藤:それは、いろんな要素もありえますよね。今の経済システム自身がうまくいかなくなったときかもしれない。

 

影山:すでにその兆候が、今日、明日のレベルでも起こってますし。

 

佐藤:そいうこともあって、Giveから始める経済のニーズはどんどん高まっていくんだろうなと思います。僕がキーワードでよく使うのが「社会人」と「会社人」の違いなんです。社会に対して色々とGiveしたい、つまりGiveから色々なことをはじめられるのが、社会人。組織の事を先に考えて判断する人は、会社人。就職するイコール会社人になるというのが、日本の特に都市部で当たり前の事なんだけど。これって人としての判断をむしろ追いやって、強制的に考えさせない方向ですよね。

よく環境問題で企業さんに話にいくと「(環境をまもることについて)個人としては賛成、組織としては反対」と言われることがある。これは社会人ではなく、典型的な会社人の考え方です。ところが、社会人であることを重視できる経営者や企業文化だと、多少コストがかかったり利益が短期的に下がってもそれは社会へのGiveとして受け入れられる。社会人と会社人が相反してしまっている現状が変われば、Giveの経済が成り立んでしょうね。

 

Protests at Sumitomo Chemical AGM in Japan

 

影山:そっちの方がよりお金を稼げる、ということを証明したいとも思っていて。クルミドコーヒーの方が大手コーヒー店よりも利益率が高いらしいと証明できたら、お金に目がくらんでいる人への説得力だって出てくる(笑)

会社人になることで、自分の気持ちに嘘をつくことにもなるし、物理的に時間が取れなくなるんですよね。会社、仕事以外のことに関心を育む余地がないという。下手したら、国の策略なんじゃないかと思ったりもしますけど(笑)。国民をバカにしとけば、国がうまくまとまるという。

 

佐藤:働いて疲れきって(笑)

 

影山:僕も、一息ついて、いよいよ二つめのお店をつくります。国分寺の北口は再開発されているんですけど、負けずにそれとは違う周辺部をつくっていきたいです。

 

佐藤:今日は本当に楽しかったです。ありがとうございました。

 

影山:こちらこそ、どうもありがとうございました!

 

【了】

(文責:城野千里)

(編集後記)

環境問題、組織論、経済のしくみ、と3つの柱でお届けしてきました。長い読み物が読まれにくい世の中になったと聞きますが、おつきあいいただきどうもありがとうございました^^ 異色のお二人ですが、きっとどこか哲学がつながっているのだと思います。影山さんは、「目的地や成果を定義して、逆算していくやり方はもうやめる」といってましたね。これは組織についてでしたが、人の生き方もそういうふうに考えられれば、もっと心地よく、日々に感謝しながら豊かに生きていけるんだろうなあと思ったりしました。

城野 千里

城野 千里

コレクティブハウス居住によるシェアする暮らし経験5年。 現在は、東京杉並区に在住し、持ちよるまち暮らしについて体験&考察中。 関心事は、社会、環境、文化、アート、料理、食べることなどなど。

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