ワークシェアで叶える、「好きなこと」で未来を耕す働き方~in the Rough(西荻窪)

10月だというのに、セミの鳴き声が聞こえてきそうな強い日差しが照りつける週末。新宿から電車で15分のここ西荻窪は、本サイトでも西荻案内所okatteにしおぎに続く、登場頻度の高い活気あふれるエリアだ。
地元の人でにぎわう食堂やカフェは、他の地域からおじゃました私から見ると、異彩を放つ光景で「地域の活気は、地元の人が(家から出て)地域で過ごす滞在時間の長さに比例する」という仮説が立てられるのではと思うほど。
そんなことを考えながら向かった今回の取材先が、未来を育てる働き方をサポートするシェアスペース「in the Rough(インザラフ)」だ。

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カウンター席とワーキングテーブル、さらに小上がりの和室スペースがあり、この日はプラントハンガーのワークショップが開催されていた

「働き方」について思いを巡らす場所

ワークショップスペースとしての利用がなされたり、併設のカフェも日によって店主が変わるのだそう。いつかやりたいと思っていたことを今、出来る範囲からはじめることを可能にしてくれる、そんなスペースなので、ここでリモートワークをしたら創造性も豊かになりそうだ。コンセントやWiFiもしっかり完備されているのもありがたい。住み開きという言葉があるように働き方開きという言葉が適当な場所なのかもしれない。

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旬のお惣菜がカウンターに並ぶ、日替わりカフェ

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色鮮やかなスムージー

in the Roughの運営元である株式会社日栄不動産 代表取締役、2児の母でもある松本弘子さんにお話を伺った。西荻窪で創業した実家の不動産屋を8年前に引き継がれた松本さん。不動産業は女性が活躍できることを実感されてきたという。

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in the Roughを運営する株式会社日栄不動産の松本弘子さん

働き方は単一じゃない

「不動産屋の約85%が従業員5名以下」というデータがあるそうで、日栄不動産も松本さんと時間も形態も異なる数名のスタッフで営業、広報、企画から経理を行っている。規模は小さいけれど多くの役割を果たさなければいけない。しかも暮らしと密接に関わる、地域密着型で事業を営んできた。不動産業というと男性的で古い体質のイメージを持ってしまいがちだが、賃貸でも持ち家でも不動産選びで決定権があるのはたいてい女性だ。暮らしにまつわる会話は女性同士だとより弾む。複数のことを同時に行い、さまざまなことを融通しながら分担して行うので実は、多様な働き方が可能で女性が活躍できる職種だという。マンパワー不足で人手を増やそうとしても時間や空間で拘束されるような通常の雇用形態がマッチしなかった。この業界でワークシェアを広めたいと、まず、自社の広報媒体である「西荻日和」を外部のライターさんにお願いすることから取り組んだ。松本さんいわく、ご自身は具体的な指示をするのが苦手な方でこれまで「これやってみない?」と背中を押す感じで仕事をお願いしてきたという。さらに新たな事務所兼お客さんとの商談スペースを竣工することとなり、これまでの経験、松本さんのしなやかなお人柄が作用して、自分たちの中だけに閉じない次なるステップを考え、in the Roughを2016年4月にオープンした。

in the Roughのロゴマーク

目指すのは、「場」つくりとのこと。週末のこの日も子連れで打合せをする人、ワークショップの主催者・参加者、カフェを切り盛りする人・食べに来る人と多くの人(内訳としては女性が8割、男性が2割)が利用し、場を盛り立てている。女性が新たな働き方を模索しはじめている社会的なニーズとマッチしたこともにぎわいに繋がっている。

がんばっているお母さん、大好き

「場」つくりを通じて、未来を育てるために取り組みたい3つのこととして「働(ワークシェア)」「食」「学」があると松本さんは教えてくれた。「働」と「食」が隣接するので、in the Roughで仕事をしていたお母さんが学校から帰ってきた子供に「今、in the Roughにいるからこっちきてご飯を食べよう」と言える。切りの良いところまで仕事をするのに待ってもらうこともできるので、子供に働く後ろ姿を見せることにもなる。

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お母さんの頑張っている姿が間近で見られるのも◎

松本さんご自身についても伺ってみた。娘さんたちが自分の事業を継ぐかどうかは本人次第だけれども、選択するときにそれが重荷とならない様、家業を残すのではなく働き方を残したいと思ったとのことだった。働き方に留まらない人生観に通ずる奥深い答えが返ってきた。

試してみることで蓄積された経験

in the Roughは、個人ベースの関わりの他に団体との提携も行っている。任意団体の個人事業主(フリーランス)チーム、「mamimu(マミム)」のマネジメントメンバーのひとり、橋本さんにも話を伺った。ITの進化でリモートワーク、在宅ワークが現実のものとなり、クラウドソーシングなどの仕組みも整ってきた。これまでの雇用形態に捉われない、副業(複業)の考え方も広まってきたことで働き方が多様になっている。橋本さんは、2人めのお子さんを出産後、会社に戻るか、フリーランスを選ぶか選択を迫られたという。結果として後者を選択した。はじめは保育園に子供を預ける収入条件として10万円をどう稼ぐか、試行錯誤の上で仕事をしてきたという。現在はなんと前職以上の収入を得ており、かつ以前に比べ、子供と接する時間が長くなったことで子供の情緒が安定したとフリーランスのメリットを教えてくれた。ただ、一人での作業は煮詰まってしまうこともあり、フリーランスであっても人とのつながり、学ぶ場の必要性は感じているという。橋本さんにとって活動拠点となっているin the Roughの存在は大きく、「学」の場として今後も利用していきたいと語ってくれた。悩みを感じつつも橋本さんのようにうまくいっている例は珍しいという松本さん。一人でなんでもこなさなければいけないイメージがあるフリーランスのハードルを少しでも下げるのにワークシェアの考えは必須だ。多様な働き方をする人たちをバックアップできるような場づくりを、in the Roughでは行っていきたいとも語ってくれた。

未来を育てる働き方、可能性のその先へ

未来を育てる働き方が選択肢として選びやすくなったり、挑戦しやすくなったりする「場」、in the Rough。ここでいう未来とは、10~15年先のこと。ちょうど子育てにかかる年数で、15年先のやりたいことに繋がることを短時間でも長いスパンで関わることで、スキルが身に付き、のちに大きな成果を生む。時間を味方につけることがポイントだそう。

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和室スペースの天井。朝から夜の空が表現されていて濃淡の違うペンティングが施されている

in the Roughには「未来を育てる働き方をサポートするシェアスペース」とは別に「未来型投資カフェ」というキャッチコピーがある。短時間・少額でもコツコツと長く運用することで複利効果が生まれ、やがて大きな資産となる。なんだか、長期保有の株式投資みたいだ。どうしても子育て世代の働く女性は、時間に追われ、生活圏内でものごとを済ませなければならないなど、さまざまな制約がある。自宅からの距離が近いということでレジ打ちをして、収入を得てもそれがその人にとっての未来に繋がるとは限らない。例えば、レジ打ちの仕事と並行して、好きな分野の記事をライターとして月に1本、年間で12本執筆する。それに15年の年月をかけ算すれば立派な経験と言えるし、周囲にもわかりやすい実績として伝えることができる。

in the Roughのような「場」が未来を豊かにするきっかけをつくり、働き手の地域での滞在時間が増えることで、ひいては地域の活気に繋がる。「西荻を中心に自身の強みを活かして仕事と子育てを両立している仲間にも多く出会えた」と橋本さん。冒頭の仮説を容易に立証できる日も遠くないかもしれない。今後のin the Roughにもぜひ注目していきたい。【了】

(文責:松山朋子)

【編集後記】
インターネットで調べれば、たいていのことが分かる時代。でもやっぱり足を運び、自ら伺う取材の良さ。それは、期待していた答えが相手から発せられる瞬間、相手と自分の想いがシンクロし、心の中で圧倒的な熱量が生まれるからではないかと思う。ググッとどの方向かも分からないけど一歩を踏み出したくなる感覚に陥る。読者の皆さんもやっぱり自分が考えていたことは正しいかもしれないと確認する手段として足を運んでいただけたらうれしい。

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